平成27年歳末ごあいさつ

平成27年も残りわずかとなりました。皆さまには、お元気で日々精進されていることと拝察いたします。

さて、本年4月25日、26日の両日にわたり、27世の退董式、ならびに28世の晋山結制を無事円成できましたこと、皆さまのご法愛の賜物と、改めて厚く御礼申し上げます。4月の中頃までは連日の雨のため、毎日のように空模様を心配しておりましたが、当日は仏天の御加護をいただき、大変に素晴らしい晴天に恵まれました。また、本堂内はもちろんのこと、境内を埋め尽くすほどの大勢の方々のご列席を賜りましたことも、大変にありがたく存じております。いま、当日の記念写真を眺めておりますと、実に朗らかな表情をされている皆さまのご様子に、大変喜ばしい思いを抱いております。

これから、顕光院住職として務めさせていただく一方で、大学での研究、教育もこれまでどおり継続していきたいと考えております。一般に「二足のわらじ」と呼ばれる状態ですが、当日来賓として御随喜下さいました愛知学院大学学長の佐藤悦成先生が御祝辞の中で語られていたように、この二つの務めは私自身にとりましては、むしろ「一足分」の左右のわらじ、あるいは、車の左右の両輪であると考えています。どちらか一方が欠けても「わらじ」は用をなしませんし、車は安全に動くことができません。

仏の教えとは何か、それを私たちの暮らしにどのような形で生かしていけばよいのか、また、国内外の様々な問題に、仏教はどのような形で関わっていけばよいのか。このような事柄を様々な視点から考え、それに対する私なりの見解をもちながら、お寺では昔から大切にされてきたご先祖さまのご供養や、皆さまのご健勝の祈願を行うとともに、大学ではそのような思いを、将来を担っていく若者たちに伝えていくということ。どちらもおろそかにしてはならない課題だと考えております。

とは言え、この二つの務めを完全に両立させることは、実際には非常に困難なことだと思います。時には皆さまに多大なご迷惑をおかけすることになるかもしれません。しかし、たとえ不完全であろうとも、そのような試みを続けていくことが、必ずや当院の護持発展にとっても有益なことであると信じております。皆さまのご理解とご協力を、心からお願い申し上げる次第です。

ところで、皆さま方のご家庭にも「家紋」があるように、お寺にも「寺紋」がございます。本堂前の水鉢に描かれておりますから、既にご存知の方もいらっしゃるかと存じますが、顕光院の寺紋は「丸に三つ引き」、つまり、丸の中に三本の線が引かれている紋様です。その由来は伝えられておりませんが、江戸時代の初期に顕光院に葬られたと記録されている信濃国長沼藩(現在の長野市北東部)の初代藩主、佐久間勝之公にまつわるものだと推定されます。今年はこの長沼藩設置四百年ということで、現地では様々な記念行事が開催されました。顕光院でもこの行事に協力するとともに、長らく失われておりました佐久間勝之公のお位牌を位牌堂内に奉祀いたしました。

また、本年五月に、山門脇に祀られておりました六地蔵尊が何者かに破壊されたため、しばらくの間、地蔵堂内は御尊像不在の状態が続いておりましたが、このたび、ようやく新しい御尊像をお迎えし、開眼供養を挙行する運びとなりました。これからも、檀信徒の皆さま方をお守りくださいますよう、大切にお祀り申し上げていく所存です。

平成27年の歳末にあたり、お檀家さまのご健勝を祈念いたしますとともに、よきお年を迎えられますことをお祈り申し上げます。