平成22年歳末ごあいさつ

今年も残りわずかとなりました。

さて、今年の残暑は例年に比べていつまでも続き、秋のお彼岸頃でも、日中の最高気温が三十度近くもありました。そのためか、秋の期間が非常に短く、十一月中旬より急に寒くなったように感じられました。また、本年は台風の数も史上最少の十四個だったということです。

 世情でも、一昨年のリーマン・ショック以来の景気の後退による不況の嵐が吹き荒れ、学生の就職率の低迷と、デフレ・スパイラルの悪影響という最悪の状態が続いています。それに比べて、BRICs諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国)は非常な成長と好景気であると報道されています。

しかし、十一月十九日付の静岡新聞に、ユダヤ人のミロニー教授が、日本の現状に対して楽観的な記事を寄せられていました。それによれば、日本のGDPが世界第二位から第三位になっても心配はいらない。中国の人口は日本の十倍だから、中国の国民の所得はまだ日本の十分の一に過ぎないし、中国には少数民族問題や、資本主義と共産党支配の激しい矛盾、国内紛争の危険さえあるとのこと。同じように、韓国は北朝鮮問題を抱えているし、インドは国内に様々な矛盾を抱え、汚職やわいろ等の不正が横行しているのだというのです。また、十一月十八日付の朝日新聞では、ロシアでは不平等な社会や官僚と労働者との差別のひどさのために、二十年に一度くらい、飢饉や革命、戦争、国家の解体、あるいは一九九八年におきた財政危機のように、とんでもない社会変化が起きるとロシア人が告白しています。ブラジルにおいても、麻薬団と警察との激しい銃撃戦が日常的に行われているそうです

確かに日本でも、最近では凶悪犯罪の報道が多くなったように思います。けれども、世界全体と比べれば、まだまだ良い方でしょう。それぞれの国家にとって大切なのは、国の面積や、人口の数、資源の量ではなく、それぞれの国民の道徳律、モラルの高低ではないでしょうか。そうだとすれば、勤勉性、正直で誠実、親切、思いやりの精神等は、日本人の素晴らしい国民性だと言えるでしょう。長い歴史の中で、良い時もあれば、悪い時もあるのは当然のことです。今しばらく我慢して、耐え忍ぶしかありません。

私も本年喜寿を迎えました。また、昭和五十六年五月に住職に就任して以来三十年、皆様のご法愛を戴いて今日に至りました。今後とも顕光院護持のため、何卒よろしくお願い申し上げます。併せて皆様のご健勝とご多幸を祈念いたします。